65歳からの挑戦!フィリピン・ セブ島に天体観測所をつくるという夢を追いかけリタイア後、単身移住!
セブ島と言えば、青い海と白い砂浜をイメージする方が多いのではないでしょうか。ところが最近、天体観測のためにセブ島を訪れる人が少しずつ増えてきているそう。そんな星好きな人々が目指すのは、セブ市内 から西へ奥まった標高520mの山中にある天体観測所Akutsu Cebu Observatory「アクツ・セブ・オブザーバトリー(ACO)」。
ここは、アマチュア惑星観測家の阿久津富夫さんが、セブ島駐在中に見た星空が忘れられず、セブ島に移住してオープンした私設天体観測所。「一度きりの人生だから後悔したくない」と65歳でセブへの移住を決意し、それから3年後に夢を実現された阿久津さんにお話を伺いました。
セブ島に天体観測所をつくろうと思ったきっかけは?
子どもの頃から星を眺めるのが大好きで、セブ駐在中も社長に許可をもらって、社屋の屋上に望遠鏡を置かせてもらっていました。その時の観測のレベルがかなり高くて、私の画像が世界中で評価されたんです。約10年の駐在を終えて日本に帰る時は、まだセブへの移住願望はなく、またいつかセブ島に来たいなあと思っていたくらいでした。
帰国してリタイアした後も観測は続けていましたが、日本は6,000m上空に時速200kmのジェット気流が流れているので、星が揺らいでうまく撮影できなくて。天体観測には空気が安定している環境が必要なんです。一方、セブ島の上空では偏西風がほとんど吹かない北半球にあるのでジェット気流の影響がなく、大気が揺らがない絶好の観測スポット。さらに、南十字星や天の川など、美しい南天の星座が観測できます。
「セブ島に戻って永住して天体観測をしたい」という人生最後の夢が芽生えたのは65歳の時でした。ところがその後、パンデミックが起こって渡航できなくなってしまい、その2年間に移住準備を進めました。ようやくコロナ禍が収束して、渡航が解禁された2022年2月にセブ島へ移住し、7月から観測所の建設に着手して、わずか 8ヶ月後に完成することが出来 ました。
天体観測所をつくる過程での苦労はありましたか?
300坪の原野を購入したものの、日本人の私には何のバックボーンもなく、手作業で開墾するしかありませんでした。雇った職人は設計図の見方が分からないので、口頭で伝えながらの作業でした。例えば、観測所に開閉式の屋根を作る際も、天文台を見たことがない彼らは屋根が動くことが理解できず、写真を見せて説明しました。でも非常に腕のいい職人に恵まれて彼らは経験と腕だけでこれだけの観測所を作り上げてくれたんです。建設にあたり現地の人をたくさん雇用できたこともよかったですし、彼らに最初に星を見せられたこともうれしかったですね。
観測所の隣にカフェも作って、現在はスタッフとして現地の人を雇用しています。また、フィリピン人のパートナーがバランガイの交渉や申請など、外国人の私にはできないやり取りを全てしてくれました。彼女がいなければこんなに早く完成できなかったです。バランガイの村長さんも見に来てくださって、「こんな場所によくこれだけの施設を作ってくれましたね」と喜んでくださいました。
どうせ作るならセブで一番大きな望遠鏡でないとインパクトがないと思い、口径45cmの望遠鏡を置くことに決 めたのですが、鏡筒が長すぎて日本から送れないかもしれない。バラして簡単に運べるものを考えた時に、寸胴鍋を思いついたんです。早速、ネットショッピングで4つの鍋を購入しました。母はラーメン屋でも始めるのかと思ったみたいです。寸胴鍋をつなげて望遠鏡を作ったのは私くらいじゃないでしょうか。
建物や望遠鏡などの総工費の800万円は、クラウドファンディングの募金と退職金でどうにか捻出しました。こういう観測所って通常は上に丸いドームをつけるんです。でも1つのドームには1台の望遠鏡しか入らず、2つドームを作ると1,000万円以上かかってしまう。だから屋根がスライディングする造りでコストダウンして、口径45cmと35cmの2台の望遠鏡を収めました。上に置くはずだったドームは、子どものプレイランドになっています。
セブ島初の天文台を訪れる人々の反応はどうですか?
もともとは自分の観測のために作ろうと思っていた施設ですが、セブ島には天文台がないので、望遠鏡で星を見たことがないフィリピンの人にも開放したいと思うようになりました。その中に天文に興味を持って、天文学者になる人が出てきたらいいなあなんて。
生まれて初めて望遠鏡を覗いて星を見た瞬間、子供も大人も本当にいい顔になるんです。先週は地元の小学生が3日かけて160人くらい来てくれました。子どもはすぐに飽きてしまって、親御さんの方が夢中で望遠鏡を見ていましたね。誕生日や記念日に星を見にくるフィリピン人が多くて驚いています。
国際交流の場と新たな観光スポットへ
最近は、たくさんの外国人観光客にも来ていただけるようになりました。中近東やインドなど、いろんな国の人で賑わって、ちょっとした国際交流の場になっています。SNSなどでも人の輪が広がって、私も人との交流が増えましたね。
セブ島に来て、昼は海でダイビングやシュノーケリング、夜はここで天体観測を楽しむ、そんなツアーが定着するといいですね。星を見たからどうってことはないんだけど、広い星の世界を見るだけで心が晴れるというか、リラックスできるんですよね。いずれは観測所の隣の斜面に、南十字星を見るための「 南天テラス」を作りたい。4月、5月は南十字星のベストシーズンなのでそこで見られたら最高ですね。惑星と共に寝起きする毎日で、忙しくて年齢的に疲れる時もありますけど、星を見た時の皆さんの笑顔を見られるだけで充実感があります。
阿久津さんの今後の夢は?
木星のGRS画像を毎年撮り続けて30年が経ちました。これからも自分の観測を続けて、将来的にはここを世界のアマチュア観測所の一つにしたい。
そうすればセブ島も天体観測スポットとして有名になりますし。私はここに骨を埋めるつもりでいますけど、たくさんの人に支えてもらってできたこの観望所は、私がいなくなった後も誰かに引き継いでもらってここに残せたらいいですね。
プライベートでは「 アストロガーデン」と名づけた畑を耕して自給自足の生活をしています。
落花生やパパイヤなどを収穫して、色々な調理法や活用法を試しています。年齢的にも健康だけには気をつけないといけないですしね。
山奥での生活は決して快適とは言えないですけど、星が観測できればそれで十分なんです。セブ島に移住する際、周囲の反対にあったり、色々なものを手放さないといけなかったり紆余曲折がありました。でも、この観測所をつくったことで、毎日こんなにたくさんの人々との縁に恵まれて、移住を決断してよかったと思っていますし、心から幸せを感じています。
アクツ・セブ・オブザーバトリー(ACO)のFacebookAkutsu Cebu Observatory
阿久津天文台の入園料
★入園料|おひとり様599ペソ(食事つき)・※0~2歳は無料 ★有料にて送迎サービスあり(お気軽にお問合せ下さい)
お食事は下記メインディッシュとライス・アイスティー付き
(ツナベリー・ポークベリー・スパゲッティー・フライドチキン・チキンイナサル・ギョウザ・豚ポークキムチ・ジャパニーズカレー)よりお選びください。
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