移住者に聞くフィリピン海外生活 第4回 一流シェフから新ビジネスに挑戦する吉田あつしさん

コロナウィルスの影響で渡航制限はありますが、現在もフィリピンで暮らす日本人は意外とたくさんいらっしゃいます。
そこで、フィリピンで暮らす日本人の皆さんに「フィリピンへの移住を決めた理由」や「現地での生活」などをインタビューし、フィリピン移住の良さや生活する上での厳しさ、メリット、デメリットなど、移住者の皆様にご協力いただきリアルな実体験をお届けする新企画!
今回で第4回目となり、以前インタビューさせていただいた「ゆーだいさん」と「フィリピンの校長」の知人でもある
5つ星ホテル大型カジノリゾート「オカダマニラ」の総料理長を務めた吉田さんにインタビューさせていただきました。
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高校卒業後、父親の紹介で京都の有名な料亭で修行を積み、それからずっと料理人として生きてきました。
拠点を京都から東京に移し、東京のハイアット系列が運営する「メンバーシップのレストラン」で働くことになりました。
その当時、海外で開催されるイベント(シンガポールと北京)に行く機会があり「英語が話せたらかっこいいな。」と思ったのが海外へ行く最初のきっかけです。
海外の食材を扱うときに日本の調理技術では限界があります。
日本は「焼く、揚げる、煮る、蒸す、(刺身など)切る」というすごくシンプルな調理技術。
中華は、作るものによって火力を調節しうまみを引き出し、フレンチであればオーブンを使ったり低温調理などがあります。
海外のイベントに行った際に見た厨房(キッチンや器具)は、和食のものとは全く異なる物でした。
そのうちの幾つかは見たこともないようなものでしたが、以前、日本で中華やフレンチを教えてもらっていた時期があり、すぐにそれらの器具を扱う事ができ対応出来ました。「自分も海外でやれるのではないか。」と思い、より海外に行ってみたいと思うようになりました。
ロンドンから香港
料理人として海外へ渡ったのは、2010年のロンドンが初めてで、その後2013年には香港へ行きました。
ロンドンでは、京都で修業していた時の先輩の知り合いが料理長を務める和食のレストランで働きました。
当時、英語は全く話せませんでしたが、声をかけてもらいロンドンで働く事になりました。
その後、香港へ行ったのは、以前日本で中華料理をやった時に「本場の中華料理が見てみたい。」と思ったのがきっかけです。
香港で新規オープンするレストランがあり、そこから声をかけていただきました。
今英語が話せる和食の料理人は重宝され、色々な国からオファーが来ることが多いです。
和食が世界無形文化遺産に登録され以前にも増して人気が高まりました。
日本でのファストフードのラーメンもフィリピンでは寿司、天ぷらといった日本料理の一つになっており人気です。
オカダマニラの統括総料理長として14のレストランをマネージメント

そして2016年、フィリピンの「オカダマニラ」が新たにオープンする日本食レストランのシェフを募集しており、こちらも知り合いを通じてフィリピンに来ることに。
海外で日本食は高級でヘルシーなイメージがあり、とても人気が高いです。
元々東南アジアが好きで、香港にいた時にタイやシンガポール、マレーシアへも行きましたが、フィリピンは、英語が通じるのが良いと思いました。
最初は「オカダマニラ」で、一つの和食レストランを担当していましたが、2019年に統括の総料理長(マネージメント)を命じられました。
レストランの数は14種類でそれぞれ違うコンセプトだったので、そこで和食とは違う事を沢山学びました。
また仕入れのための農場や漁港の視察にも行き、野菜や魚など食材を沢山見させてもらいました。
自分の考えが大きく変化した分岐点となるフィリピン「チャンスは色んなところに沢山ある!」
フィリピンに来てよかったと思う事は、フィリピンに来てから自分の考え方が大きく変わりました。
特にビジネスマインドが大きく「これをこうしたらいけるんじゃないか?」など、そういうところに目が行くようになりました。
「チャンスは色んなところに沢山ある。」そんな考え方になりました。
今までの料理人、そして約一年半の総料理長の経験から「自分でお店が出せるのではないか?」と思うようになり、新たな一歩を踏み出すためにオカダマニラを退職しました。
最初は家内の地元(ダバオ)にラーメン屋が少ないので「ラーメン屋」を出すつもりでした。
しかし、オカダマニラの経理を統括していた日本人パートナーがちょうど同じ時期にオカダマニラを退職する事になり「二人で一緒に何かやろう。」という話になりました。
パートナーの奥様もダバオ出身なので、二人でダバオへの出店を考えていましたが、二人でマニラのレストランに食事へ行ったり、色々と見てるうちにマニラでビジネスを始めることにしました。
一流シェフから新たなビジネスへの挑戦
現在、すでに会社を二つ立ち上げています。
ひとつは、レストランを立ち上げるためのコンサルティング会社です。
日本と比べフィリピンでは工事など思うように進まず、時間がかかるため建築の交渉やコーディネート、メニュー、仕入れ業者の選定、経理関係などのアドバイスを行います。
私がオペレーションを行い、法律事務所等にコネクションがあるパートナーが経理等の事務関係を行っています。
現在、既に何件か相談を受けています。
もうひとつは、レストランと食材の輸出入を担うトレーディング会社です。
最初はラーメン屋か焼き鳥屋をオープンする予定でした。
しかし、マニラは新型コロナウィルスの影響でまだレストランでの食事ができない為、キオスクのような屋台で「唐揚げとおにぎり」を販売するショップをオープンすることにしました。
まもなくオープン「唐揚げとおにぎり」を提供するお店「Karachubi」のフランチャイズ展開
鶏肉の炊き込みご飯と唐揚げのセットでフィリピン人でも気軽に買える値段で提供し、まずは5店舗。軌道にのれば1年で10店舗をオープンする予定です。

コミサリーキッチンをひとつ作って仕込みを行い、各店舗に置いたフライヤーで揚げる。
いずれはフランチャイズも考えており、店舗には余分な手間をかけず「揚げるだけ」のオープンしやすいモデルになります。
唐揚げキャラ「Karachu」と会社名の「Omusubi Trading Corporation」の「bi」を掛け合わせて、お店の名前は「Karachubi(カラチュビ)」にしました。

フィリピンの料理人の給料を高くして生活を豊かにしてもらいたい。いろんな海外に行かせて高い給料を取らせたい。
という思いがあります。
私がフィリピンでかかわったスタッフは、みんな真面目でいい人ばかりなんです。
オカダマニラでもシェフが約400人いました。ただ彼らのほとんどは目の前の事しか見えず、ただその処理だけを行っている。給料をもらうためだけの仕事。
先を見ようとしない、考えていないスタッフがほとんどで「将来料理長になる、店を持ちたい。」そんな考えのスタッフはほぼいませんでした。
フィリピンは、8時間労働ですが、私は日本で一日18時間とか20時間働いていた時がありました。
一日8時間と20時間を一年にすると時間はどのくらい違うか。
職人は技術を覚える知識を持つことができればレベルが上がって行きます。やったもの勝ち。覚えたもの勝ちです。
彼らは私の修業時代の話を興味を持って聞きます。本人も習いたいという気持ちがあるのだと思いました。
私はスタッフたちに「だから私は26歳で料理長になり、給料がこれだけもらえた」という話をしました。
もちろんスタッフに8時間以上を働かせることはありませんが、何人かのスタッフは仕事の後、自発的に他のレストランのキッチンを見たり、手伝うスタッフが何人か増えました。
技術を持ったフィリピン人を育てる人材育成とサポート
私が教えられることは彼らに教えて、例えば海外のレストランで働いて稼ぎ、いずれフィリピンに戻って自分のお店を出す。
フィリピンのレストラン、シェフのレベルは上がると思います。そんな手助けをしていきたいです。
技術を身につけたら高い給料がもらえるようになる。なんとかそういうことができたらいいなと思っています。
すでに動いている二つの会社以外にもう一つ会社を立ち上げる予定です。
メイドさんに日本語と料理を教えて日本の駐在が多いシンガポールやタイにメイドさんを派遣する会社です。
料理は日本食に限らず、様々な種類の料理を教えるつもりです。
メイドさんにメイドの仕事だけではなく、いざという時にレストランでも働けるようなスキルを身につけてもらいたい。

今はパートナーと二人でフィリピンに何か貢献できるよう、色々と考えながらビジネスをしていきたいと思っております。
またフィリピンはリゾートやゴルフ場もある退屈しない国で自分に合っています。
フィリピンは今後どのように変化すると思いますか?
フィリピンはまだまだ延びると思います。コンサルティングの会社にも様々な話がきています。アジアの中でもフィリピンはまだまだチャンスがあり、和食レストランのビジネスにもチャンスはあると思っています。
「大変じゃないですか?」とお聞きしたら「大変さというよりも新しいことに挑戦することが毎日楽しい。」と笑顔で語ってくださり、料理人として一流シェフへ昇りつめた吉田さんだからこそ、フィリピン人の料理人を育てたいという情熱をもってこのビジネスを動かすことができるのだと思います。
一流シェフが考案した「唐揚げと鶏の炊き込みご飯」絶対食べてみたいですよね!まずはマニラからのスタートですが、是非ここセブ島にも展開していただきたいと思っています。セブにはまだこのようなお店がないですし、手軽な価格で本格和食の味が楽しめるとなるとフィリピン人にも受け入れられること間違いなしですね!
将来的にはフランチャイズ展開される予定なので、興味がある方は是非吉田さんにご相談ください。お問合せ先➡こちらをクリック
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第1回:「フィリピンで暮らす日本人#01」「Takiさん」